ハイブリッド ワーク: ある 1 週間に見る 2 つの事例

ある 1 週間に見る 2 つの事例。ハイブリッド ワークの良い面と悪い面をご紹介します。
少しでいいから「自分」時間が欲しいと思ったことはありませんか。常に誰かと繋がっている昨今、そういう時間を持つのがなかなか難しいこともあります。毎日オフィスに通勤している場合はなおさらです。もし、夜が明ける前に起きてシャワーを浴び、コーヒーを淹れ、慌ただしく出掛ける必要がないとしたらどうでしょうか。のんびり起き出して、軽く体を動かしたり、子どもとの時間を過ごしたりしてから、1 時間もかけて出勤することもなく、そのままホーム オフィスで仕事を始められるとしたら。
朝の風景も次のように違ってくるかもしれません。
多くの人にとって、このような望みを叶えるのは、そう難しいことでありません。
盛んに取り入れられているハイブリッド ワークですが、それには正当な理由があります。外出禁止令が出されたことで大勢のワークフォースがリモートでの勤務に移行して、在宅勤務がどういうものかがわかると、その働き方が好まれるようになりました。それも相当に。事実、フルタイムでのオフィス勤務に戻らなければならないのであれば退職も視野に入れると答えた人の割合は 57% に上ります。
とは言え、ハイブリッド ワーク モデルを望んでいるのは従業員側だけではありません。事業者側もこれを絶好の機会と捉えています。中には、ハイブリッド ワークがコストを削減し、生産性を向上させ、持続可能性という目標達成を助ける一種の奇跡のように考えている向きさえあります。
ですが落ち着いて、バラ色に映る眼鏡を外してよく見てください。ハイブリッド ワーク モデルでそうした効果を得られる可能性はありますが、それにはまず従業員の声に耳を傾け、計画を立て、適切なテクノロジーを実装し、さらには新たな知見に基づいて継続的に調整していくことを厭わない姿勢が必要です。
ハイブリッド ワークを取り入れた生活の、とある 1 週間
平均的なハイブリッド ワーカーの 1 週間の生活を、2 つの事例で見てみましょう。一方はハイブリッド ワークの理想的な例であり、他方はハイブリッド ワークの悪い面が出た例です。
月曜日、事例 1
John の会社では月曜日と金曜日を在宅勤務日に指定しています。その 2 日については通勤の必要がないのはありがたいものの、オフィスにいるときに感じられる連帯感にも意義を認めています。
午前中: 急いで出掛ける必要がないので、John は朝の時間を満喫します。パートナーとの会話を楽しみ、朝食を作り、ソーシャル メディアを読み流して過ごします。仕事の時間になると、寝室に用意した在宅勤務用の場所に移動します。会社からはノートパソコンを 1 台支給されているだけです。その日の予定表を確認するところから仕事が始まります。
正午: 1 回目のミーティングです。ビデオはオフにしているため、散らかった寝室を同僚に見られることもありません。同僚たちの大半もビデオを切っていますが、これにはミーティング時に参加者の姿が見えないと、会話に参加しようとしている人がいても気付けないという難点もあります。折悪く、ミーティング中に近所の人が芝刈りを始めました。John が受け持ちのプレゼンを開始したところで、同僚がその音に対する苦情を訴えます。「自宅で働いていると、こういうこともあるよ」と答えます。結局、参加者たちの判断で John の番を最後に回すことになります。
午後: 自宅での仕事の合間に空き時間ができることがわかっていたので、John は先延ばしにしていた健康診断を受けるために診察予約を取っていました。プライバシーが心配なため、私用の携帯は会社のメッセージ アプリやメールには繋いでいません。それが原因で、外出している間に重要なメッセージが届いていることに気付けませんでした。仕事場に戻ったところで事態に気付き、大慌てで状況の把握に乗り出すはめになります。
月曜日、事例 2
Kate の会社は柔軟なハイブリッド ワーク モデルを導入しています。具体的には、オフィスには行きたい日に行き、最も生産性を発揮できる時間に働けば良いというものです。Kate は会社が自分の判断を信頼してくれていると感じています。
午前中: 月曜日はほとんどの社員が在宅勤務にしていることがわかっているので、Kate も自宅で仕事をすることにします。また、集中して取り組むべき仕事が多いため、ミーティングで予定が埋まってしまう前に、週の初めにそういったプロジェクトに着手するという進め方を好んでいます。朝は日差しをたっぷり浴び、子どもに学校の準備をさせながらゆったりと過ごします。このあたりは John と同じです。メッセージを確認した後はノートパソコンのメール画面やメッセージ アプリを閉じます。そのままにしておくと、すぐそちらに意識をとられてしまうことが嫌というほどわかっているためです。チームのメンバーからのメッセージは携帯電話の通知でわかるようにしています。滅多にない緊急の要件でも気付けるので、心配はありません。
正午: 順調に仕事を進めた後は、その日初めてのミーティングがあります。Kate は台所のこじんまりとしたスペースから参加します。そこは居心地がよく、近所の様子がよく見渡せる場所なのです。会社からは携帯用のコラボレーション デバイスが支給されています。その青色のデバイスがなければ、どうやって仕事をしていいかわからないくらいです。ボタン 1 つでミーティングに参加できるうえ、デジタル アシスタント機能まで搭載されています。デバイスに向かって「ミーティングに参加して」と言うだけで、簡単に参加できます。
また、ホワイトボードや注釈の機能も用意されています。一番良い点は、同僚のほとんどが同様のデバイスを使用していることです。プレゼンの最中に郵便配達員が台所の戸口に近づいてきて、飼い犬が騒ぎ出します。Kate が「邪魔が入ってしまってごめんなさい」と言いますが、同僚たちは不思議そうな表情を浮かべ、その中の 1 人がたずねます。「何のこと?」。コラボレーション デバイスの、ノイズ除去と Optimize for my voice が機能していたのです。
午後: Kate は再びメッセージ ツールを閉じます。その日の仕事を切り上げて、バスで帰ってくる子どもを迎える時間です。午後 3:30 にはいつも通り長い休憩を取って子どもの面倒を見、宿題を手伝うなどして、子どもたちが眠ってから仕事に戻ります。すばらしいのはチーム全員が Kate のスケジュールを把握し、それを受け入れるだけでなく、後押ししてくれていることです。Kate は、生活のあらゆる面で最高のパフォーマンスを発揮できる柔軟性と自由を与えてくれる会社で働けることをありがたく思っています。
水曜日、事例 1
今日はまた出社の日です。John は火曜日のオフィス勤務を終え、この後も木曜日には出社しなくてはいけないので、早くも金曜日が待ち遠しくなっています。
午前中: John は早起きして仕事の準備に取り掛かります。通勤は嫌ですが、その間はずっと好きなポッドキャストを聞いていられるという楽しみもあります。職場で友人に会えるのも楽しみです。
正午: 午前中はコーヒーを飲みながら前日に終わらなかったプロジェクトの状況を把握することに費やします。今度はチーム ミーティングがあり、全メンバーが 1 つの部屋に集まります。ソーシャル ディスタンスをとれるだけの空間のゆとりがなく、参加者同士の距離が近すぎて落ち着きませんが、状況の変化に慣れるほかありません。ミーティングでは、ホワイトボードを使って新しいアイデアのブレインストーミングを行います。ミーティングが終わると、John は立ち上がってホワイトボードの写真を撮ります。目立つように赤字で「削除禁止!」と書いて四角で囲んでいても、結局消されてしまうためです。機密扱いのプロジェクトであることはわかっているものの、マネージャーからホワイトボードの内容を記録して他のメンバーにメールで共有するように指示を受けているのです。共有する際に私用の携帯を使うことにも不安があります。残念ながら、今回のような指示を受けるのは初めてではありません。
午後: 気力の低下を感じ始めた John は、メールの作成や同僚との雑談で時間つぶしをすることにします。気分転換に少し散歩に出たいと思うものの、昼食をつまみながら友人と過ごします。全社員がオフィス内にいることが、会社にとって重要なことだとわかっているからです。オフィスへの出入りのたびに社員証を読み取らなければならず、その記録を管理者が追跡しているという話も聞きます。退社の打刻を終えたところで帰宅します。
水曜日、事例 2
Kate はチームとのブレインストーミング セッションの日程を組み、可能であれば出社するようにメンバーに呼びかけます。
午前中: チーム ミーティングの開始時刻は午後 1:00 です。出社準備をする前に、その時間を使ってメッセージの確認や作業を進めます。オフィスに到着すると、新型コロナウイルス感染症の拡大前とは随分変わってしまったことが思い起こされます。その日は従業員が半分程度しか出社していないため、駐車も余裕でした。
正午: Kate がオフィスの中に入るとデジタル サイネージが示されたデバイスに迎えられます。
オフィスの使用状況や新しいポリシーがリマインダーとして表示されるのがありがたい配慮です。「OK、会議室を探して」とデバイスに向かって言うと、画面に QR コードと会議室までの道順が表示されます。携帯電話でその QR コードをスキャンすると、一番近い空き部屋までの道順が画面に表示されます。
午後: チームのメンバーに会議室までの経路を送り、全員が無事にその場所に到着します。テーブルに置かれたデバイスには、部屋が数時間前に清掃済みであることと、間もなくミーティングの開始時刻であることが表示されています。チームのメンバー 2 人が出社できないことがわかっているので、バーチャル ミーティングの準備をします。
Kate が「ミーティングに参加して」と言うと、リモート参加するメンバーがビデオ会議の画面に表示されます。この画面はホワイトボードも兼ねています。自宅から参加しているメンバーも、会議室のメンバーを同じように見ることができるだけでなく、各メンバーの下には名札が表示されるようになっています。
チームが一堂に会したところで、Kate はワイヤレスでプレゼンを披露します。リモートで参加しているメンバーの 1 人からの提案で、プレゼンに注釈が加えられます。オフィスからの参加者と自宅からの参加者が入り混じり、ホワイトボードはたちまち共同作業の場になります。ブレインストーミングのセッションが終わって解散となり、Kate も一安心です。全員のアイデアは、専用のミーティング スペースに安全に保存されています。チーム全体でコミュニケーションを取れたこと、そして協力して取り組みを達成できたことに Kate も満足です。
金曜日、事例 1
ようやく金曜日がやってきました。John の会社では、午前 9 時から午後 5 時の間の従来の就業時間に、従業員が「業務に就いている」ことを求めています。金曜はいつにも増してミーティング予定が多いのも、誰もが大型プロジェクトを納期に間に合わせるべく奔走しているためです。
午前中: 直属のマネージャーからミーティングへの招待を受けました。ところがこのマネージャーは東部時間を基準にしています。John の基準となる太平洋時間では、ミーティングの開始時間は午前 7:30 にあたります。月曜と金曜の楽しみである朝の時間を取れなくなることに、John は慌てます。マネージャーはそのプロジェクトについて、その日のうちに終わらせることがいかに重要であるかを説明します。John はその日の仕事に優先順位をつけなければならず、ミーティングが多いために他のプロジェクトに遅れが生じてしまうことを伝えます。上司は理解を示してくれているものの、John は仕事に集中できる時間を作るのに苦労します。
正午: 何度かのミーティングを終え、仕事を片付けるために作業スペースに腰を下ろします。多少立て込みはしたものの、一定の進展もあり、オフィスにいるときのように集中を妨げる出来事がないのはありがたいことです。パートナーから昼食をどうするか聞かれると、仕事の合間に食べることになるとしぶしぶながら答えます。
午後: John はチームのメンバーから進捗状況を説明するよう求められます。現状の出来には自信があり、説明の準備も整っています。出番が回ってきたところで、John は Wi-Fi の電波が弱いことに気付きます。音声は不安定でビデオも途切れ途切れです。スライド資料について説明するものの、同僚からはよく聞こえないという不満が出始めます。John は席を外すと、パートナーが Netflix をストリーミングで視聴しているのを見つけ、すぐに止めてもらうことにします。回線の帯域幅の問題を解決して作業スペースに戻り、プレゼンを再開しますが、上司の次のような一言に遮られます。「自宅からのリモート ワークは、うちの会社には向かないようだ」
金曜日、事例 2
Kate の会社では金曜日はミーティングを行わないことが制度化されていて、労働時間にも柔軟性を持たせています。
午前中: 午前の間にチームの最新の状況を把握し、その週のアクション事項をまとめて、プロジェクトの 1 つに集中するための時間を作ります。次のミーティングの時間を気にして時計に目をやる必要もなく、作業に取り組めます。火曜日に提出されたチーム メンバーの一週間の更新状況に目を通し始めます。その際に利用するのが非同期のビデオ プラットフォームです。このビデオは、その週で完了させたこと、次週の予定、Kate に助けて欲しいところを各メンバーが 10 分間でまとめた録画データです。自分のペースで状況を把握することができるのが気に入っています。また自動的に 1.2 倍速で再生されるようになっているため、素早く情報収集ができるうえ、録画なので慌てることもありません。
正午: 午前中に大型プロジェクトに取り組んだ後、近所のカフェに行き、ヘッドセットを付けて音楽を聴きながらいくつかの仕事を片付けます。仕事をしていると、マネージャーからメッセージが入ります。「ごめんなさい、ミーティングをしない日なのはわかっているけど、少しだけ話せますか」。そこで Kate はノートパソコン越しに上司と話をしますが、店内の Wi-Fi 通信の品質があまり良くありません。すると自動でビデオの解像度が変更され、背景の解像度は下げつつ、Kate 本人は鮮明に映るように調整されます。ヘッドセットにはノイズ キャンセリング機能が搭載されているため、店内のざわめきがマネージャーに届くことはありません。
午後: 帰宅すると、少しの間、個人目標と業務上の目標に目を向けます。会社のコラボレーション ソリューションは、チームとの協力状況やワークライフ バランスの設定、フォーカスタイムの目標などに関する分析情報を提供してくれます。このツールの通知から、次の週に予定しているチームメイトの 1 人とのミーティングの時間が、業務終了後の勤務外の時間帯に重なっていることがわかります。Kate はチーム メンバーの時間とワークライフ バランスを尊重しているため、ミーティングの予定を組み直します。
続いて、すべきことはすべて押さえたと安心して週末を迎えられるように次週の計画を立て、月曜日に取り掛かる最初のプロジェクトを確認します。今週の成果に気分を良くした Kate は、帰ってきた子どもたちと充実した時間を過ごします。週末に思い立って仕事に手を出す可能性もありますが、すばらしきハイブリッド ワークの 1 週間もひとまずは終わりと言って良さそうです。
ハイブリッド ワーク モデルを自宅の環境に取り入れる
ここで紹介した 2 つの事例が示しているように、自宅での勤務を命じただけのワークフォースをハイブリッド ワークフォースと呼ぶのは無理があります。ハイブリッド ワークの準備状況の評価から得られたデータによると、自社のハイブリッド ワークに関する計画には不足が無く、よく練られていると感じている回答者の割合は、43% に留まっています。
ハイブリッド ワークを十全に機能させるには、適切な方針の策定と技術の導入が必要です。また、従業員一人ひとりが疎外感を抱くことなく、会社が支えてくれていると感じられるような配慮や、ハイブリッド ワークに適応した企業文化の醸成も必要です。そしてもしハイブリッド ワークを正しく機能させることができれば、事業者と従業員、環境のいずれにも大きなメリットがあります。
Webex ではハイブリッド ワークの導入を支援するリソースを用意
貴社のワークフォースはハイブリッド ワークの効果を最大限に引き出すために必要な準備ができていますか? このインタラクティブな評価ツールを活用すれば、10 分足らずで貴社のハイブリッド ワークの準備状況を評価できます。同様の立場にある企業担当者の回答結果と比較したり、ハイブリッド ワークの時代に成功を収めるためのアクション プランを提示するレポートを入手することが可能です。
#2. ハイブリッド ワークを成功に導く 6 つの戦略に関する電子書籍を読む
今こそハイブリッド ワークを構想段階から取り入れるときです。この電子書籍は、全世界の 4,000 人近いナレッジ ワーカーを対象に行った 1 年分の調査結果を、わずか 14 ページにまとめた集大成となる資料です。ここにはハイブリッド ワークを成功に導くために必要な知見のすべてが詰まっています。
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