インドではビジネス プロセス アウトソーシング (BPO) の分野が有望株の一角として急成長を見せています。他業種の例に見るように、新型コロナウイルス感染症の大流行は BPO セクターにも甚大な影響を及ぼしましたが、同セクターはこの困難な時勢にあっても並外れた打たれ強さを見せています。インドではイノベーションとコラボレーションによって BPO セクターに独特のビジネスチャンスが生まれ、同業界の事業者は困難を切り抜けてハイブリッド ワークへと向かっています。このブログ シリーズではこうしたインドの状況に対する展望を、Jamie Romanin が 2 回に分けてお届けします。
第 1 部:複合型ワーク時代における「イノベーションの最前線」に立つコンタクト センター
コロナ禍という 100 年に一度の出来事が、世界中のあらゆる国で「生活様式」や「人間の条件」を変容させつつあります。 事実、この状況に教えられたことがあるとすれば、それは世界のあり方が個人の面でも仕事の面でも決定的に変わってしまったということであり、同時に、良好な関係を育み合理的かつ革新的なビジネス プロセスを取り入れることでニュー ノーマルのあり方、すなわちハイブリッド ワーク モデルに応えることの必要性と緊急性が以前にも増して高まっているということです。 特に企業は、最新の技術を導入し、堅牢なプロセスを整えることで複合型のワーク モデルに対応しなければならないことを肌で感じています。 インドも他国の例に漏れずこうした需要やさまざまな要求に応えるべく悪戦苦闘していますが、爆発的な感染の影響による全国的なロックダウンの解除後に最初に立ち直ったのが国内の情報技術 (IT) 産業やビジネス プロセス管理 (BPM) といった業界であることは頼もしい事実です。 また、IT サービスに対する需要拡大が追い風となり、最新の技術を導入し堅牢なプロセスを整えて新しい複合型のワーク モデルに対応しようという企業の動きを後押しする形になっています。 世界では新型コロナウイルス感染症の拡大初期の数か月の間に、リモート ワークの導入に向けた試行錯誤が繰り広げられました。設備や機器を家族と共用せざるを得ないという従業員もいる中、在宅勤務への大規模な移行が行われたのです。そして今、この在宅勤務が市場における光明として、全国的な広がりを見せています。 第 1 部にあたる今回の記事ではハイブリッド ワークに目を向けつつ、こうした世界の潮流やビジネス プロセスの基盤として不可欠なコンタクト センター自体がどのように変化、変容したのか、そしてこの新しい、場所を問わない働き方における今日の難題を克服したのかをつぶさに検討します。成功への方向転換
まず押さえておくべきは、リモート ワークという新たな課題への対処にあたってはインド国内のコンタクト センター業界の役割が大きく、そのおかげで従業員の分散化やホストの自動化およびプラットフォーム サービスの導入に向けて速やかに方向転換できたという点です。 この巧妙で計算された動きは業界全体に効果をもたらしました。具体的には、この数か月でカスタマー エクスペリエンスにかかわるやり取りがオンラインに移行するとともに、サービスの提供に従事する従業員の分散化が行われるという形での大きな変化として表れました。 この変化を数字から考えてみます。たとえば、ソフトウェア分野の業界団体である NASSCOM の試算によれば、BPM 業界の成長率は 2021 年 3 月 31 日を期末とする会計年度において 2.3%、経済規模にして 380 億ドルに達するとされています。一方インド政府によると、同業界の潜在的な経済規模は 2025 年 3 までには 555 億ドルに上るという試算もあります (PTI、2021 年)。 この数字には、市場の変化を受け入れて対応していこうという企業の姿勢が見て取れます。つまりインテリジェントなビジネス プロセスを導入する重要性を認識し、能力発揮の妨げとなるものを取り除いた新しいコンタクト センター文化を取り入れ、責任感を持って人材を支援する組織によってデジタル変革と運用の最適化を実現しようという姿勢がそこにあります。進化するカスタマー エクスペリエンス
確かに、変化は至る所に現れています。コロナ禍によってもたらされた変化は顧客が期待するものをも変え、企業は取り残されまいと必死です。現実を見てみましょう。ロックダウンや場所を問わない働き方の広がりによってサービスの問い合わせ件数は増え、ユーザーが期待する解決時間もこれまでになく短くなっています。 最後に銀行の窓口に行ったときや、接客を伴うお店を利用したときのことを覚えているでしょうか。このような状況はあらゆるセクターで発生しています。しかもコンタクト センター業界ではその規模は大きく、顧客サービスの管理と複数チャネルによるサポートの提供は企業にとって重大事となっています。 そしてビジネス プロセス アウトソーシング (BPO) の現場では、強化のための対策が期待されています。デジタル変革という潮流に乗って、カスタマー エクスペリエンスにかかわる運用を能力のあるパートナー企業に委ね、自らは基幹事業に注力しようという企業がこれまで以上に増えています。 BPO 市場の成長に初めて陰りが見られ (特にインド国内でロックダウンが実行された 2021 会計年度の第一四半期)、提供への懸念から技術関連への資本投下が落ち込んだものの、そのまま不振に陥るというシナリオは間違いなく変わり始めており、すでに良い方向への成長が見られます。成長を加速させる刺激策
ではコンタクト センターを中心に、市場全体を勢いづかせている施策には他に何があるでしょうか。 第一に挙げられるのは、コロナ禍という時代状況にあって、複合型ワークによる負担の軽減措置としてインド政府が法律および規制の緩和を実施し、場所を問わない働き方の実現を支援したことです。 インド政府は 2020 年 11 月、その他のサービス プロバイダ (OSP) 向けに改訂版ガイドライン 1 (Bureau、2020) を発行しました。2021 年 6 月にはさらに対象を拡大しています。この改訂によって国内の OSP と国際的な OSP の間にあった区別が無くなり、あらゆる種類の OSP が相互的につながりを持てるようになりました。それだけでなく、同じ会社やグループ会社、つながりのない企業に属する OSP センター間のデータの相互接続に対して設けられていた制限も撤廃されています 2(Doval、2021 年) 。 このガイドラインは主に、ナレッジ プロセス アウトソーシング (KPO) や IT 対応サービス (ITeS) 事業者、コール センターに加えて、音声系の BPO に対応するものとなっています。制限撤廃の効果は比較的規模の小さい市や町にまで人材獲得の手を広げられるようになったことだけでなく、アウトソーシングにおける世界最大級の仕向け先であるインドが競争力を維持し、シェアを伸ばしているフィリピンなどの地域に対抗できるようになったことも挙げられます。 さらにもう 1 つ、BPO 業界に有利に働くと考えられる動きがインド政府から通達されました。それはアウトソーシング サービスの仕向け先がインドの場合、または外国の事業者向けのそうしたサービスを同国内で行う場合には、18% の物品・サービス税 (GST) が免除されるというものです 4 (Sikarwar、2021 年)。この措置のおかげでインド国内のコンタクト センターは収益化の見積もりの観点で他国と渡り合うことができます。 こうした動きが国内産業にとって歓迎すべき流れであることは疑いようなく、政府も企業の支援には積極的です。 ですがこの題材については 2 回目の記事でもう一歩踏み込んで検討してみたいと思います。次回は複合型ワークの実現にあたっての障壁やカスタマー エクスペリエンスを向上させることの重要性に目を向けるとともに、注目の革新的なコンタクト センター業界で働くワーカーの活躍を支える、コンタクト センターの最新機能を探ります。Webex がハイブリッド ワーク時代のチーム コラボレーションをいかに促進できるかについて詳しくは、示唆に富むこちらのブログをご覧ください。出典
- Bureau、F (2020 年 11 月 6 日)。The Financial Express。
- Doval、P (2021 年 6 月 24 日)。The Times of India。
- PTI (2021 年 2 月 15 日)。LiveMint。
- Sikarwar、D (2021 年 9 月 21 日)。The Economic Times。