オンライン授業と対面授業を併用したハイブリッド方式の課程で学ぶ UW ホワイトウォーター校の学生たち (写真提供: UW ホワイトウォーター校 / Craig Schreiner 氏)。 ウィスコンシン大学 (UW) ホワイトウォーター校は、型にはまらないハイブリッド学習のあり方を模索している教育機関です。 対面授業とオンライン授業の方式を十分な検討のもとに組み合わせることで、学生一人ひとりが持つ固有のニーズに応えています。 「本校の中心にあるのはインクルーシブな教育コミュニティを提供するという使命です。学生たちの持つ背景や経験、アイデンティティや能力は多種多様であり、そうした学生たちの学びを支えるのが私たちの役割です」こう話すのは同校でテクノロジー普及コーディネーターを務める Kirsten Mortimer 氏です。 UW ホワイトウォーター校では毎年、学部生と院生を合わせて、約 11,500 人の学生を迎え入れています。その多くは両親が大学を出ていない第一世代の学生、外国からの留学生、退役後または現役の軍関係者、障がい者福祉サービスの受給資格者といった多様な背景を持っています。他にも復学生や従来の枠には収まらないような背景や環境を持つ学生がいますが、こうした学生たちは学業とフルタイムの仕事とを掛け持ちし、両立させていることも珍しくありません。 このように多様な学生が集まる大学という場所で、学生一人ひとりのニーズに応えるにはどうすればよいでしょうか。 UW ホワイトウォーター校の場合、Webex のコラボレーション テクノロジーが可能にした柔軟性が、なくてはならないものでした。
インクルーシブな教育とは何か
テクノロジーをインクルーシブな教育コミュニティの構築に活用した UW ホワイトウォーター校での実例を紹介する前に、ここで言うインクルーシブな教育とはどのようなものを指すのかを明確にしておきましょう。 教育におけるインクルージョンは多面的で重要なテーマです。 UW ホワイトウォーター校は
ダイバーシティ ステートメントの中で、インクルージョンを次のように表現しています。 「いかなるアイデンティティ、文化、背景、経験、地位、能力、意見を持っているかにかかわらず、誰もが高い目標を追求する機会を公平に与えられ、本学組織に貢献すること」 その言葉通り、UW ホワイトウォーター校では「可能な限り多くの学生が最大の成功を収められる学習コース設計」を目標に、すべてのカリキュラムで
ユニバーサル デザインの導入を模索しています。同校では、大学のカリキュラムと並行した活動、施設、テクノロジーにもこのユニバーサル デザインの原則を適用すべく取り組んでいます。(詳しくは、UW ホワイトウォーター校の『
インクルーシブ エクセレンス ガイドライン』を参照してください。) UW ホワイトウォーター校ではあらゆる取り組みが、大学全体でインクルーシブなコミュニティを育てることにつながります。「UW ホワイトウォーター校は教員、職員、学生の三者がインクルーシブなコミュニティの一員であることを実感でき、関係しあう環境作りとその維持に努めています」
2020 年に UW ホワイトウォーター校で行われた Black Lives Matter (ブラック ライブズ マター) の呼びかけを目的とした行進にて、肘をぶつけて挨拶する学生たち (写真提供: UW ホワイトウォーター校 / Craig Schreiner 氏)。
UW ホワイトウォーター校に見るコラボレーション テクノロジーの活用法: インクルーシブな教育に役立てるヒント
UW ホワイトウォーター校の取り組みを見れば、柔軟かつインクルーシブな教育環境を構築する上で、コラボレーション テクノロジーが心強い味方となることは明らかです。多様な学生の集まりがそのような環境でコミュニティを形成でき、テクノロジーに支えられながら学ぶことができます。 同校では高品質の
ビデオ会議ソフトウェアによるオンライン授業から
Webex Assistant のようなアクセシビリティの機能に至るまで、Webex の多彩な機能を駆使してすべての学生にすばらしい学習エクスペリエンスを届けています。世界中でコロナ禍の脅威が広がる中、同校では Webex テクノロジーの活用を積極的に推し進めました。
Webex デバイスの利用を広げることでビデオに対応したハイブリッド学習向けの教室数は 31 か所増え、ビデオ対応の会議室の数も合わせるとキャンパス全体で 60 か所を超えるまでになりました。 コロナ禍でビデオ会議の利用機会が増えるに伴い、同校ではコロナ禍の間だけでなく終息後も Webex を活用することで、より柔軟な学習機会を学生に提供する新たな方法を見出しました。学生の支援を目的としたテクノロジーへのアプローチとして、同校では次のようないくつかの原則を取り入れました。
障壁を克服する、個々の事情に合わせたソリューションの提供。多様な学習スタイルや学生のニーズに応えるために、同校はテクノロジーを強化して、非同期型のプログラム、ハイブリッド方式の授業、対面型の学習エクスペリエンスを提供しています。 フルタイムで働いているために非同期型の学習方法を希望する学生がいた場合でも、同校の完全にオンライン化された課程であればそうしたニーズに応えられます。また、対面での授業を希望しながらも就業時間が制約となったり、オンラインでの個別指導を希望する学生がいたりした場合も、対応できる環境があります。
前例がすべてではない。UW ホワイトウォーター校では、ある学習課程や会議、活動がいつも対面方式やオンライン方式で行われているという理由で、慣例的にその方式を基本にするというような決まりはありません。たとえば、初年度のオリエンテーション プログラムでは柔軟性とアクセシビリティを提供できる環境を十分に整え、キャンパスでの開催と並行して、一部のセッションを Webex を利用してオンラインで開催しています。 「(主催者は) 各セッションの目標を見極めた上で最適な形式を決定できます」と Mortimer 氏は述べています。
フィードバックを真摯に受け止める。UW ホワイトウォーター校は大学側の考えや問題意識を学生と共有するためのチャネルを公式と非公式の両方で設けています。学生からのフィードバックに妥当性があれば、大学側はそれに応じて対処します。「学生が求めるものに応えるという大学の責任を果たすため、本校では問題を解決できる方法を取り入れたり、これまでのやり方を変えたりすることに真剣に取り組んでいます」と Mortimer 氏は言います。
適切なソリューションを選び、その使用に専念する。授業や学期ごとに別のコラボレーション プラットフォームに切り換えさせるような時間の浪費を、学生に強いることはしません。Mortimer 氏が強調するのは高品質のソリューションを 1 つ選び、それを使い続けることの意義です。UW ホワイトウォーター校にとって、そのソリューションが Webex でした。 「規模に合わせた拡張が可能で、オンラインでのコミュニケーションやコラボレーションに対応した最新のソリューションを何年にもわたって使い続けられること。それがテクノロジーを大学に導入する上で外せない要素の 1 つでした」と Mortimer 氏は述べています。「そうしたテクノロジーを導入して使用準備を整えておいたことで、当校のコミュニティは、リモートでの教育と学習への移行を迫られてもすぐに全力で取り組むことができました」 それでは UW ホワイトウォーター校が以上の原則をどのように取り入れたのか、その実例を見ていきましょう。
心理学を専攻する Chyna Hill-Scanlan さんの発表後に、Webex を通じて視聴者から寄せられたライブ コメント (写真提供: UW ホワイトウォーター校 / Craig Schreiner 氏)。
好きなときに、好きな場所で学ぶ
フルタイムの仕事。長時間に及ぶ通勤通学。新しい国で生活することへの慣れ。いずれも UW ホワイトウォーター校に通う学生の多くが直面する問題ではありますが、こうしたことは他の大学では対応しきれない難問であったり、健全で充実した学習エクスペリエンスを妨げる主な要因になっていたりすることもあるかもしれません。 UW ホワイトウォーター校では、これらの問題への解決策を提示しています。 学生がフルタイムで仕事をしているのであれば、同校の非同期型の学習プログラムを活用できます。一例をあげると、学士課程や修士課程、各種の認定プログラムをはじめとする
オンライン課程は完全に非同期での授業配信に対応しているため、学ぶ場所や時間を学生が自由に選べるようになっています。 Mortimer 氏は次のように話します。「本校では忙しい生活を送っている働く人のために非同期型のプログラムを提供しています。このプログラムを活用することで、学生が都合のいい時間に専門分野に取り組み、有意義な時間の使い方ができます」 「非同期の授業配信であったり、Webex を通じたリアルタイムでの授業配信であったり、学生が働いていても授業に出席できるということがわかったのも、このような柔軟な仕組みがあってこそです。この柔軟性によって、多くの可能性が開かれています」 また、Webex を利用した非同期型の授業配信やオンライン学習は、公共交通網を使って通学している人が多い第一世代の学生にとって価値があることもわかりました。 メリットはオンライン授業だけにとどまりません。
Webex Messaging を利用すればクラスメイト同士で都合のよいときに連絡を取り、直接相手と顔を合わせなくても授業の内容を議論したり、雑談を交わしたりできます。そのようにしてコミュニティが築かれるのです。 また、対面での学習エクスペリエンスを望む学生にとっても、オンラインでの個別指導、リモートワーク中の大学教授とのやり取り、授業後に見直せる講義録画といった、リモートやハイブリッド方式の学習機会が有用であることも明らかになりました。Webex があれば都合のよい時間にどこからでも参加できるため、グループ ワークにも取り組みやすいという利点があります。
教室の中と外における柔軟性
UW ホワイトウォーター校の取り組みは、柔軟性の高い授業体験を提供するだけではありません。イベントを開催する際にはアクセシビリティも確保するように配慮しています。 タウン ホールでのミーティングには必ず
Webex Events を利用してハイブリッド方式のイベントとして開催し、字幕が必要な学生や職員のためにリアルタイムで字幕を表示する機能を活用しています。 同校の多くの学生組織も、ミーティングを開く際には出席者が対面でもオンラインでも参加できるように Webex とビデオ対応の教室を利用しています。 こうしたハイブリッドの形態は、セールス マーケティング コンペや学生組織のミーティングなどの課外活動におけるアクセシビリティの向上にも効果を発揮しています。 Mortimer 氏はこう話します。「特にハイブリッド方式をオプションとする予約が多く見られます。キャンパスではかなりの数の会議があり、対面によるものは少数ですがリモートのオプションが付いていることから、その重要性が見てとれます」
ハイブリッド型のイベントであるファイナンス デイ 2021 でバンキングとコーポレート ファイナンスに関する討論に耳を傾ける出席者たち (写真提供: UW ホワイトウォーター校 / Eric Stelter 氏)。
留学生が安心して参加できる環境作り
不安感のないインクルーシブな教育環境を整えることは、大学の留学生向けプログラムにおける最たる優先事項です。大学生活の始まりはどんな学生にも大きな変化が伴います。同時に新しい国や文化にも適応しなければならないのであれば、なおさらです。 ここでも対面とリモートを組み合わせたハイブリッド方式が効果を発揮します。 UW ホワイトウォーター校では、留学生は直接顔を合わせる前に、Webex を利用したオンラインのオリエンテーションに参加します。同校の国際教育マネージャーである Jodi Simek 氏も、いつでも学生からの質問を受けられるように Webex Messaging の機能を活用しています。 留学生が安心できる自宅環境からオンラインでやり取りすることで、新しい生活への不安を和らげ、一から人間関係を築いていくのを助けるとともに、後日実際に対面する際にリラックスできるようにサポートできます。 「留学生たちも英語で話したり、別の国の学生と同じ作業に取り組んだりすることに自信が付き、対面で会うことになる頃には、誰とでも落ち着いて接することができるようになりました」と Mortimer 氏はこのように話します。「Webex と対面の両方で交流を持つことで帰属意識や自信が生まれ、学生の安心感を高めることにつながっています」 Simek 氏自身も Webex で参加したオンラインのオリエンテーションによって留学生と話す機会が増えたと同時に、無駄なやり取りを減らすことができたと話します。 オンラインでのオリエンテーションの実施モデルは今後も続けていく予定だということです。
入学最初の年をハイブリッドで迎える
UW ホワイトウォーター校では、概要説明を行う入学時のオリエンテーションである SOAR (Student Orientation, Advising, and Registration: 学生向けオリエンテーション、学業および生活のサポートと履修登録) を、オンラインおよびハイブリッド方式のイベントとして首尾よく終えることができました。 コロナ禍に見舞われた際、同校では Webex と Involvio を利用して SOAR を完全なオンラインのイベントとして開催しました。Involvio は学生向けのエクスペリエンス プラットフォームを代表する製品であり、Webex ポートフォリオの一角を担っています。 「とてもすばらしい体験でした」Mortimer 氏は次のように続けます。「すべてを 1 か所に集約し、万端に整えてオンラインで完結させなければならないという条件において、Webex は学生にとっても実に有効な選択肢でした」 オンラインでの実施モデルはアクセシビリティの面でも好都合でした。というのも、学生を支える関係者たち、たとえば両親や家族、友人などが仕事で忙しい中でも参加しやすかったからです。 UW ホワイトウォーター校では、大学生活に伴う変化にさらされる学生への手厚い支援策として新入生のグループを作り、そこに学生の相談役を付けています。そうしたグループでのミーティングや相談役同士のつながりも、Webex を利用すればオンラインで維持することができます。 再び対面で顔を合わせることができるようになった今、同校は SOAR をハイブリッド モデルに移行させました。 柔軟性とアクセシビリティを最大限に高めるため、同校では一部のセッションは Webex で、それ以外はキャンパスで実施という選択肢の提供を続けています。 Mortimer 氏は次のように話します。「今後もオンラインと実世界の両面で学生の支えとなる製品をシスコが提供してくれるのを、注意深く見守りたいと思います」
Webex によるアクセシビリティの向上: Webex Assistant などの関連製品
UW ホワイトウォーター校では、オリエンテーションだけでなく年間を通してインクルーシブな環境作りに役立つ Webex の多彩なコラボレーション機能やアクセシビリティ関連の機能を利用し、多様な学生のさまざまな学習スタイルに役立てています。
Webex Assistant: 参加者を誰一人取り残さないリアルタイムの文字起こしと字幕機能 Mortimer 氏は AI 対応のデジタル アシスタントである
Webex Assistant が、ビデオ会議での生産性やアクセシビリティの向上に効果を発揮する多彩な機能 (リアルタイムの文字起こしや字幕機能) を備えている点を強調しています。 「Webex Assistant は実に頼りになる Webex の追加機能です。この機能のキャンパスでの活用方法は多岐にわたります。ある学部では、オンラインの集まりでは必ず Webex Assistant を有効にしておくように全教職員に指示を出しています」 音声をうまく聞き取れない学生には、オンライン授業やミーティングで活用できる Webex Assistant のリアルタイム字幕機能が好評です。聞き取りに問題がない学生にとっても、字幕機能は理解の助けになっています。 「この機能は学習内容に関する二次的な情報源として利用できます」と Mortimer 氏は話します。 学生はまた、Webex Meetings の使用中にアクセシビリティ パネルを活用できます。アクセシビリティ パネルには、スクリーン リーダーによる通知、サイズ調整が可能なチャット パネル、画面を見やすくする明暗のモード変更機能など、多彩な機能が備わっています。
マネジメント学教授の Praveen Parboteeah 氏が経営学博士グループの学生にハイブリッド方式の講義を行う風景 (写真提供: UW ホワイトウォーター校 / Craig Schreiner 氏)。
Slido: 学生の声を拾い上げるライブ投票と Q&A 機能 アクセシビリティとインクルージョンを保証するにあたって重要となるもう 1 つの要素は、学生の思いや学びのあり方を把握し、その状況に応じて調整を図ることです。 そうしたデータを得る手段として活用でき、リアルタイムでの投票と Q&A を可能にする Webex の
Slido ツールには、他には代えがたい価値があることが認められています。 教職員の多くは Slido を使って投票を実施し、匿名性を保ちつつ学生の考えや思いを知る方法として利用しています。 また日や週に 1 度、学生の理解度や知識の定着度を測る簡便な手段にもなっています。 「投票ツールは授業中や 1 週間の最後に知識の定着度を簡単に確認する方法として使える、便利なソフトウェアです」と Mortimer 氏は話します。 また、規模の大きい授業をまとめあげる上でも Slido は有効です。たとえば Q&A パネルを利用すると、インストラクターは従来のチャットボックスで質問を受け付けるよりも効率的に質問事項を管理できます。Slido では回答済みの質問を除外できるほか、得票率の多さによって、最も数の多い質問を見分けられるように工夫されています。質問の一覧を見れば、票数の動きから他の学生も自分と同じ疑問を持ったのかもしれないとわかり、自分一人ではないのだという心理的な励ましにもなります。
優れた教育で多様な学生の活躍を支援する
UW ホワイトウォーター校では Webex を活用して多様な学生を支援する画期的な取り組みを続ける中で、学生の自治組織や障がい学生支援センター、キャンパス リーダー、大学のテクノロジー委員会などの広範なステークホルダーとも協議しつつ、一貫してフィードバックを求めています。 「大事なのは、一人ひとりの声を拾い上げることです」Mortimer 氏は次のように続けます。「テクノロジーがそれを使う人にどう役立つのかをきちんと考えもせずに排除することはしたくありません」 テクノロジーの画期的な利用法とこれからの展開に関して、UW ホワイトウォーター校の取り組みは順調なようです。 同校は
従来の枠には収まらない学生に学習機会を提供する大学として米国の上位 10% に入っているほか、
障がいを持つ学生への教育の提供においてはウィスコンシン州で 1 位となっています。全米でも上位 20 位以内に入ることは言うまでもありません。また同校は Colleges of Distinction による
米国の優良大学にも 5 年連続で選出されています。
インクルーシブな教育コミュニティの構築を目指す UW ホワイトウォーター校の取り組みについて詳しくは、Kirsten Mortimer 氏が登場する Webex コミュニティ トークを視聴ください。Webex for Education でも、大学での学生のエクスペリエンスを一変させる Webex ソリューションについてご紹介しています。全国から強豪が集まる車いすバスケの週末大会で、UW ホワイトウォーター校の Jake Wilson 選手がシュートを放つ瞬間。(写真提供: UW ホワイトウォーター校 / Craig Schreiner 氏)。
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