顧客体験は大きな転換点を迎えつつあります。企業が AI エージェントや自動化、デジタルチャネルといった新たな要素を取り入れ、顧客データの新たな情報源が増える中で、顧客体験は、断片化が収まるどころか、ますます断片化が進むおそれがあります。この状況に対してシスコが出した答えこそがコネクテッド インテリジェンスです。すなわち顧客とのあらゆるやり取り、人間および AI のエージェント、ワークフロー、企業システムなどすべてを融合させた運用モデルです。
顧客はすでにチャネル間の分断による損失を実感しています。チャネルを移動するたびに同じ情報を繰り返して伝えることになり、自動応答ではコンテキストが失われてしまいます。AI と人間のエージェントでは、顧客に対する視点が異なります。そうした状況の裏側で、企業はさまざまなモデルやアプリケーション、ワークフロー、セキュリティリスクがますます複雑に絡み合う状況に対処し、いついかなる時でも一貫性のある顧客体験を提供しなければなりません。
この問題は AI の力だけでは解決できません。適切な基盤がなければ、問題がさらに深刻化することもありえます。次世代の顧客体験では人と AI エージェント、チャネル、ワークフロー、そして企業システムが一体となって機能することが求められます。つまり、コンテキストを引き継いで顧客とやり取りし、リアルタイムで適切な応答を返すように調整し、顧客の立場に立って行動するために必要な信頼を得なければならないということです。
コネクテッド インテリジェンスこそがその答えであり、エンタープライズ CX の実現に向けてシスコが開発を進めている運用モデルです。シスコが掲げるアプローチと戦略には 4 本の柱があります。1 つ目はインテリジェント フロントドア、2 つ目はコンテキストに応じたオーケストレーション、3 つ目は AI ネイティブの拡張可能なプラットフォーム、4 つ目は信頼性とセキュリティを考慮した設計です。この柱となる要素同士がつながることで、顧客体験テクノロジーの集合が融合して 1 つになり、あらゆるやり取りを記憶、学習して行動に反映し、改善につなげていくコネクテッドシステムに変わります。

インテリジェント フロントドア
インテリジェントな顧客体験(CX)の実現に向けた最初の一歩はモデルではなく、顧客とつながるその瞬間です。
顧客とのやり取りは音声通話やチャット、メッセージ、プロアクティブな営業活動など、さまざまなものが起点になります。ここで問題となるのは、顧客の意図を察し、適切な AI または人間の担当者に取り次ぎ、使用するチャネルやコミュニケーションの手段が変わっても一貫性を保てるだけのインテリジェンスが、エントリーポイントに備わっているかどうかです。
コネクテッド インテリジェンスの時代にあっては、フロントドアは単なる顧客の入り口ではなく、顧客体験が学習を始めるところです。常時接続を提供するオムニチャネルでは、双方向のエンゲージメントレイヤこそが、あらゆるものを支える基盤です。ここを誤れば、その後どれほど AI に投資しても、顧客体験を立て直すことはできません。
コンテキストに応じたオーケストレーション
従来のコンタクトセンターでは適切な振り分けが制御の要でした。エージェント型 CX において、より戦略的な制御の要となるのがコンテキストです。この変化には、大半の人が考えている以上に重要な意味があります。
コンテキストはデータとは異なります。データとは記録です。対してコンテキストとは生きたシグナルであり、顧客体験における AI の目的は、人が直感的に行っているのと同じ方法でシグナルを利用することです。つまりバラバラに見える経験をつなぎ合わせ、まったく違和感を感じない応答を返すことにあります。自分のことをよく知っている担当者の対応がどのようなものかを思い浮かべてみてください。そうした担当者は、あなたに関する情報をただ覚えているだけではなく、そのことを取り上げる適切なタイミング、そして不適切なタイミングを心得ています。
ここが、コンテキストを難しくしているポイントです。明確にわかるシグナルには、嚙み合わない会話、同じ用件での再度の電話、解決の見えない問題などがあります。しかし、ほんのちょっとしたシグナルの方が重要なことがあります。そのシグナルとは、顧客が答える前に見せるわずかな逡巡であったり、単一のデータポイントからでは見極めが難しいような、5 回程度のやり取りに共通するパターンであったり、あるいは問題を解決するのではなく、ただ相手の状況を受け止めることが適切な応答となる瞬間だったりします。
そうしたコンテキストはインテリジェントなオーケストレーションを行う上で大いに役立ちます。スマートな振り分け、次に取るべき最善のアクション、人への引継ぎ判断、エージェントによるコーチング、自ら学習する AI エージェントなど、こうした的確な調整ができれば、あらゆる場面でより的確なやり取りができます。これこそが、シスコがコンタクトセンターに取り入れようとしているインテリジェンスです。
「エージェント同士がやり取りをして情報を共有する中で、コンテキストを維持できるかどうかが、そのシステムが知的と感じられるか、機械的だと感じられるかの違いとなって表れます。そのためシスコは、コンテキストと記憶とを統合したレイヤへの投資を重点的に行っています。そのレイヤが、他のあらゆるものを支える土台なのです」
シスコの Webex Customer Experience 担当 VP 兼 GM、Vinod Muthukrishnan
AI ネイティブの拡張可能なプラットフォーム
コネクテッド インテリジェンスは箱に入れた製品として発展していくものではありません。発展していくためにはプラットフォームが必要です。箱は閉じるためのものであるのに対し、プラットフォームは開くためのものだからです。
1 つ前の時代の標準は統合でした。今の時代の標準は、相互運用性です。サイロ間でデータ交換だけが行われるシステムと、一体化されているように動作するシステムの違いです。AI エージェント、人間のエージェント、顧客のコンテキスト、チャネルワークフロー、CRM 統合、そして企業システムのすべてが、顧客のライフサイクル全体を通じて安全かつ一貫して機能しなければなりません。それができなければ顧客にちぐはぐな印象を与えてしまいます。一方、それが実現できれば、知見が積み重なり、1 つひとつのやり取りで得た情報が次のやり取りに活かされます。
拡張性の高い AI ネイティブのプラットフォームとは、安全性と信頼性に優れ、AI と人間の担当者の双方に適した相互運用可能な基盤のことです。つまり、体験を無理やりそのアーキテクチャ内にとどめておくようなクローズドシステムではなく、自社の事業にとって重要なツールやシステム、パートナーとつながることで、それらの間をインテリジェンスが自由に移動できるオープンなプラットフォームなのです。
信頼性とセキュリティを考慮した設計
AI 時代には、信頼をめぐるリスクがこれまで以上に大きくなります。速やかに答えを出せることや効果的なパーソナライズに対応した AI というだけでは不十分です。AI を活用することで、監視と管理の行き届いたセキュアで拡張性の高い、安心して使える CX を企業は求めています。
かつて、AI エージェントを開発するのがこれほど簡単になったこともなければ、その逆にエンタープライズレベルの AI エージェントを作るのがこれほど困難になったこともありません。シスコではセキュリティは後付けの機能ではありません。私たちが作るあらゆるものの基盤であり、その伝統はコンタクトセンターに取り入れられたすべてのレイヤに通底する要素です。
行動できる AI エージェントは、同時に、誤った行動を取る可能性がある AI エージェントでもあり、本来アクセスすべきでないデータを漏洩させる可能性があります。さらに企業が履行できない約束をしてしまう可能性があります。想定外のことに悪用されてしまうおそれがあります。どれも極端なケースというわけではなく、エージェント型 AI をめぐる新たな現実です。これにはソフトウェアによる修正プログラムではなく、アーキテクチャレベルでの対応が必要です。

シスコの根本的な差別化要因はここにあります。シスコは Splunk のオブザーバビリティ機能をネイティブの AI Defense に統合することで、リアルタイムの検出や異常のモニタリング、ネイティブな AI ガードレールをスタック全体で実現しています。
エンタープライズレベルのセキュリティと管理のしやすさ、オブザーバビリティはイノベーションの足枷にならずに、イノベーションを大規模に維持可能なものにしています。
1 つのエクスペリエンスの統合、1 つのプラットフォーム、One Cisco

顧客にとっての体験は、チャネルやシステム、チームの寄せ集めではありません。彼らが体験するのはあくまで 1 つの企業です。顧客は、自分を認識し、前回の会話を覚えていて、適切なサポートにつないでくれているかどうかを実感します。そして、そうでない場合には、対応の分断を感じます。
コネクテッド インテリジェンスは顧客との間のそうした分断を解消します。顧客がそこにいる理由を把握しているインテリジェント フロントドアが起点となって、ジャーニー全体でコンテキストを保ち、オープンなプラットフォーム上で人と AI とをつなぎ、あらゆるやり取りの基盤となるセキュリティと信頼を築きます。
1 つのプラットフォームとは単一の製品という意味ではありません。顧客体験の裏側を支える人と AI エージェント、アプリケーション、システムが 1 つのものとして一体的に機能するということです。そのため企業には、ハードウェアからモデルに至るまで、AI をシンプルに導入、保護、管理、拡張できる方法が必要です。目的は結合することであって、複雑化させることではありません。
「One Cisco」には、顧客と従業員が利用する基盤ネットワークからアプリケーションまで、あらゆるものをつなぐことで、シスコのあらゆる強みをさまざまな課題の解決に活かせるという意味があります。つまりシスコにとっては、顧客との断片的なやり取りの積み重ねを越え、個々のユーザーに寄り添った、連続性があり信頼できる体験を企業に提示する好機となっています。
あらゆるやり取りが過去のやり取りにつながり、次のやり取りをより良いものにする。それがコネクテッド インテリジェンスです。





