これまで 10 年以上、職場でのコラボレーション方法は電話、メッセージ、会議のまま変わっていません。IP でワークロードを統合するというパラダイムは功を奏してきましたが、これ以上の進化は望めません。Webex は何年にもわたってチャネルやデバイスなどの選択肢を追加してきたとはいえ、基盤となるエクスペリエンスは同じです。ここで考えなければならないのは、他に何を追加すればよいかではなく、コラボレーションを根本的に改善する方法です。
この状況を変えるのが、AI です。AI は機能拡張の一つというだけでなく、より直感的かつインテリジェントで効果に優れた次世代のコラボレーションに向けた推進力となっています。Webex では、これまであらゆる AI イノベーションを先導してきました。たとえば、音声、動画、言語インテリジェンスを統合して、参加者全員が同じ会議室にいるように感じられる “Distance Zero”体験を創出しました。また、Cisco AI Assistant では生成 AI を利用して、プラットフォーム全体の生産性向上機能に責任ある AI を統合しています。
こうした AI イノベーションの次なる進化の形となるのが、エージェント型 AI です。これは、AI が未然に問題を予測し、重要な会議の前に会議室の問題をトラブルシューティングするといったことが可能になる環境です。たとえば、電力事業者が局所的な停電を検出して問題の拡大を防ごうとする場合、AI が影響を受ける顧客にプロアクティブに通知を送信して、安全対策について案内し、推定される復旧までの時間を知らせます。これにより、緊急の問い合わせが殺到するのを防ぎ、情報に基づいて円滑に応答できるようになります。エージェント型 AI の環境では、従業員が面倒なタスクの遂行に何時間も費やすのではなく、インテリジェントなインサイトと創造性に富んだツールを使って戦略的な問題に注力できます。一方、IT 部門とリーダーシップは全体を監視して、AI エクスペリエンスが信頼性に優れた安全でシームレスなものになるように対策を取ることができます。
エクスペリエンスの ROI
AI イノベーションは、より優れたエクスペリエンスを従業員、顧客、IT 部門に提供するのでない限り、役に立ちません。Webex の基本理念は、重要なのはエクスペリエンスであり、AI を活用してインタラクション、コラボレーション、そして全体的な生産性を向上させるというものです。Webex が最近行ったさまざまな機能拡張は、お客様の組織内に有意義な価値をもたらしています。
Webex は、12 か国で 8 つの業種の 1,000 人のお客様とユーザーを対象に、AI がビジネスにもたらしている効果についてアンケートを行いました。回答結果によると、AI は次のように大きな効果を上げています。
- AI Assistant for Webex Contact Center によって、平均処理時間を 8% 短縮
- 他のソリューションに比べ、3 倍のスピードでデバイスを導入
- AI Assistant for Webex Suite によって、メモの記録、重要な情報の検索、コンテンツの作成といった業務に費やす時間を 1 週間あたり 5 時間節約
顧客と従業員の体験という点から、上記の AI による価値創造要因によって、よりスケーラブルで生産性の高い次世代の働き方が実現し、最終的には顧客と従業員の体験が向上している状況を見ていきましょう。
カスタマーエクスペリエンス センターの実現
主に事後対応として顧客の問い合わせに対応する従来のコンタクトセンターは、あらゆるやり取りが卓越したサービスを提供する機会となる、エクスペリエンスセンターに進化しつつあります。こうしたエクスペリエンスセンターは長い間「将来に向けた約束」でしたが、人工知能や自動化などのアドバンスドテクノロジーによって、ついに実現するようになってきています。Webex がエクスペリエンスセンターを実現するために使用しているのは、バックオフィスシステムにシームレスに統合する、ユーザーの目的(インテント)を理解して自動応答する AI Agent や AI Assistant などのツールからなる Webex Customer Experience ポートフォリオです。さらに、Epic Systems を統合した Webex Contact Center によって、エージェントや医療機関に、Epic を直接統合した AI 駆動型コミュニケーション プラットフォームを提供します。
AI Agent を活用した、音声チャネルとデジタルチャネルでの人間とのようなやり取り
2025 年 3 月 31 日に注文可能になる Webex AI Agent で、複数のチャネル全体にわたってパーソナライズされた会話型エクスペリエンスを提供することで、セルフサービスに変革をもたらすことができます。AI Agent はリアルタイムでユーザーのニーズを理解し、ユーザーの好みに適応しながら、人間と対話しているようなやり取りを進めます。企業では、動的な会話に対応する自律型エージェントか、応答が事前設定されたスクリプト化エージェントのどちらかを選択し、独自の要件に合わせてカスタマイズした AI Agent を簡単に設計して導入できます。バックオフィスシステムと緊密に統合する AI Agent が、顧客の問題を完全に解決できるよう支援し、効率と顧客満足度を向上させます。この革新的なアプローチは、カスタマーサービスをより直感的で応答性と有効性に優れたものに変革します。
リアルタイムの文字起こしと応答内容の提案機能を備えた、Webex Contact Center 向け AI Assistant
顧客とのコミュニケーションを最適化するために、エージェントに自動的にガイダンスとコンテキストを提供する Webex Contact Center 向け AI Assistant では、仮想エージェントの対応の要約、中断された通話の要約、自動 CSAT、トピック分析、エージェント ウェルビーイングなどの機能も利用できます。
さらに、2025 年第 2 四半期にリリースされるリアルタイムの文字起こし機能により、ライブコール全体にわたって継続的に、正確な会話の文字起こしを瞬時に使用できるようになります。これにより、エージェントは顧客とのやり取りを追って明確に理解できるため、聞き取りにくい、癖のあるアクセント、早口、複雑な話し合いといった課題を克服するのに役立ちます。応答内容の提案では、顧客に対応中のエージェントに対し、どう応答すべきか、あるいは次にどのように対応できるかに関する、コンテキストに沿ったリアルタイムの推奨事項が表示されます。これらの推奨事項は AI Assistant 内のエージェントデスクトップに直接表示されるため、エージェントは必要な情報をすぐに入手して通話時間を短縮し、顧客満足度を向上させることができます。

Webex Contact Center のネイティブ Epic 統合
この新しい最先端の統合により、コンタクトセンターのエージェントと医療機関は Epic System(Cheers/Hyperdrive)内で Webex のマルチチャネル コミュニケーション プラットフォームを使用できるようになります。つまり、Epic 内でネイティブの単一ユーザーインターフェイスを使用して、エージェントが患者、医療機関、介護者、メンバーのすべてに関する必要な医療情報をすぐに入手して、どんな会話にも対応できるようになります。これにより、効果的でパーソナライズされたサポートを提供できます。

エンドユーザーおよび IT 部門向けの AI を活用した従業員体験
卓越した従業員体験を実現する最初のステップは、スマートワークスペースを設計して、エンゲージメントを強化するインテリジェントな対話を促進することです。Webex のアプローチでは、2 つの主要なグループを重視しています。それは、日常業務におけるシームレスな連携を可能にするために Webex のテクノロジーに活用するエンドユーザーと、エンドユーザーのエクスペリエンスがスムーズに進むよう取り組んでいる IT プロフェッショナルです。この 2 つのグループを支援することで、よりつながりのある、直感的で将来を見据えたワークプレースを創出します。
エンドユーザーに対しては、シスコのデバイスを Webex Suite と組み合わせて、単一のプラットフォームと統合 AI Assistant を活用し、シームレスに連動するハードウェアとソフトウェアならではの価値を提供します。また、現場の従業員体験のレベルアップを目的に、小売拠点、ヘルプデスク、モバイルワーカーなどのすべてに、顧客の問い合わせにシームレスに対応するための AI ツールを提供します。さらに、このエコシステムを AI Assistant によるワークフロー自動化、AI エンタープライズ検索、そして Apple AirPlay 対応 Cisco Devices for Microsoft Teams Rooms などに拡張することで、エンドユーザーの日常業務を支援します。それだけではありません。2025 年第 2 四半期には、話者の識別機能、AI 生成機能を備えた Vidcast、サードパーティ製アプリケーションへの共有機能を含め、Webex Suite でさらに多くの AI 拡張機能が利用可能になります。
IT 部門については、フルスタック コラボレーションのアプローチによって、これらの高度な機能の導入と管理を簡素化します。ネットワーキングツール、セキュリティツール、コラボレーションツールを統合して、組織が AI を活用したイノベーションをシームレスに実装できるよう支援する、まとまりのあるプラットフォームを提供します。Control Hub では、管理者が新しい AI 機能を使用して、組織に応じて Webex AI をカスタマイズし、AI の使用状況を詳細に理解できるようになります。また、ベータ版の Smart Diagnostics でインテリジェント ワークプレイスの管理をさらに強化し、組織全体で AI を活用したトラブルシューティングとデバイスの更新を可能にしています。
Webex Calling Customer Assist
Webex Calling Customer Assist では、AI を活用して従来のコンタクトセンターの限界を打ち破り、すべての従業員が Webex アプリケーションから直接、シームレスな 1 対 1 のサポートを提供できるようになっています。これにより、看護士、小売従業員、倉庫スタッフなどのフロントラインワーカーと、ローカルブランチや社内ヘルプデスクなどのナレッジワーカーが、簡単に質問に答えて予約をスケジュール設定し、現場に特化したレベルのサポートを提供することが可能になります。

AI Assistant によるワークフローの自動化
To Do リストに項目をメモする代わりに、Webex AI Assistant 内で直接アクションを実行できようになりました。AI Assistant に、リードの作成やレコードの更新を指示したりできます。さらには、よく使われているアプリケーションで会議の要約を添付するよう指示することも可能です。現在、サポート対象のアプリケーションは Salesforce、Jira、ServiceNow ですが、今後さらに追加される予定です。

AI エンタープライズ検索
ナレッジワーカーは毎週、いくつものアプリケーションで情報やドキュメントを検索するのに多大な時間を費やしています。Outlook、Salesforce、ServiceNow などのさまざまなエンタープライズ アプリケーション対応のコネクタを使用すれば、情報を収集する際に、ディスカッションを裏付ける情報を Webex で検索し、ナレッジグラフを基に意思決定をスピードアップできます。

Apple AirPlay 対応 Cisco Devices for Microsoft Teams Rooms
AirPlay 対応のシスコデバイスが Microsoft Teams Rooms で利用可能になり、iPhone、iPad、または Mac からシスコデバイスにワイヤレスでコンテンツを共有できるようになります。

Control Hub での AI 機能
Webex Control Hub は、Webex Suite およびデバイス全体の AI を一元管理する場所です。この Control Hub に拡張機能が追加され、さまざまな言語モデルからなる企業の AI エコシステムの管理、AI 機能のカスタマイズが可能になるとともに、セキュリティとプライバシーを完全に制御しながらワークフローを統合できるようになります。アーリーアダプターとしてすでに Webex AI を利用しているユーザーは驚くべき成果を実感しています。Webex 管理者は近いうちに、組織内の独自の AI 導入およびメトリックを評価できるようになります。

Smart Diagnostics によるインテリジェント ワークプレースの管理
現在ベータ版になった Smart Diagnostics を使用して、IT チームの作業にエージェント型 AI を投入できます。Smart Diagnostics は AI を活用したワークスペースのランキングと連動して、占有率や緊急性などの要因に基づき、IT 部門の注意を必要とするワークスペースをインテリジェントに識別します。また、Smart Diagnostics は問題を解決できるよう、 AI を使用して目下の問題に関連するコンテキストを理解しやすい実用的なフォーマットで提示します。さらに一歩進んで、Smart Diagnostics の修正案を実装するオプションに加え、すべてのデバイスを更新するための一括アクションのオプションも提供します。
Enterprise Connect 25 で詳細を実際にご確認ください
AI イノベーションの新たな進化としてのコンタクトセンターからエクスペリエンスセンターへの変革により、組織が AI Agent とワークフローで従業員を支援し、最終的には従業員の効率向上とエンゲージメントの強化を実現することを大いに期待しています。私、Snorre Kjesbu が Enterprise Connect で行うシスコ基調講演「Experiences Amplified–How AI Can Fuel Better Employee and Customer Experiences」にぜひご参加ください。コラボレーション、カスタマーエクスペリエンス、ワークプレースの生産性を大幅に向上させるために開発された最新の AI イノベーションをご紹介します。また、他の 7 つのセッション、ブースのプライベートツアー、1 対 1 のミーティング、そしてもちろん特別な Webex カフェでのエクスペリエンスもお見逃しなく。たくさんの情報を皆さんと共有できることを楽しみにしています。
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